フレンドショアリング(Friend-shoring)とは、サプライチェーンを価値観や安全保障上の利害を共有する同盟国・友好国の中で構築し直す考え方です。2022年に米国のイエレン財務長官が提唱して広まりました。生産拠点を自国に戻すリショアリング(国内回帰)や、近隣国に移すニアショアリングと並ぶ概念で、コストだけで最適地を選ぶ従来のグローバル化から、供給の安定性と安全保障を重視する方向への転換を表しています。
リショアリングとの違いは、自国にこだわらない点にあります。半導体のサプライチェーンは、設計・EDA(米国)、製造装置(米国・日本・オランダ)、材料(日本)、先端製造(台湾・韓国)、後工程(東南アジア)と国際分業が深く、1か国ですべてを賄うのは現実的ではありません。そこで信頼できる国々の間で分業を組み直し、懸念国への依存を減らすのがフレンドショアリングの狙いです。
半導体での代表例は、TSMCの熊本工場(JASM)とアリゾナ工場、Micronの広島工場への投資、ESMC(ドレスデン)などです。いずれも台湾・米国・日本・欧州の間で生産拠点を分散し、各国政府が補助金で後押ししています。また2022年に米国が提唱した日米韓台の半導体協力の枠組み(いわゆるChip 4)も、この考え方に基づくものです。
一方で課題もあります。友好国の中での生産は、従来の最適地より人件費や建設費が高くなることが多く、補助金がなければ採算が取りにくい案件もあります。また、どの国を「友好国」とみなすかは政治情勢によって変わりうるため、企業にとっては長期的な投資判断を難しくする面があります。中国市場の大きさとの兼ね合いも含め、各社は経済合理性と安全保障の両立を迫られています。