欧州半導体法(European Chips Act)とは、EUの半導体産業の強化とサプライチェーンの強靭化を目的とした規則で、2023年9月に発効しました。官民合わせて430億ユーロ超の投資を呼び込み、世界の半導体生産に占める欧州のシェアを、当時の約10%から2030年までに20%へ倍増させることを目標に掲げています。米国のCHIPS法に対応する欧州版の半導体政策と位置づけられます。
同法は3つの柱で構成されています。(1)Chips for Europeイニシアティブ:研究開発から試作ライン(パイロットライン)、設計基盤、人材育成までを支援します。(2)供給の安全保障:欧州で初となる種類の製造施設(統合生産施設・オープンEUファウンドリ)を認定し、各国の国家補助を認めやすくします。(3)監視と危機対応:サプライチェーンを監視し、供給危機の際には情報収集や優先発注などの措置を取れるようにします。
同法の下で進む代表的な案件が、ドイツ・ドレスデンのESMC(European Semiconductor Manufacturing Company)です。TSMCが70%、Bosch・Infineon・NXPが各10%を出資する合弁会社で、車載・産業向けの成熟〜中堅ノードの工場を建設しています。一方、Intelがドイツ・マクデブルクで計画していた先端工場は2025年に計画中止が発表され、先端ロジックの誘致は目標どおりには進んでいません。
目標の実現性には疑問も出ています。欧州会計検査院は2025年の報告で、2030年に20%というシェア目標の達成は難しいとの見方を示しました。欧州は露光装置のASMLや、パワー半導体・車載半導体のInfineon・STMicroelectronics・NXPなど強い企業を抱える一方、先端ロジックの量産拠点を持たないことが課題とされています。こうした状況を受け、後継となる政策の見直しの議論も始まっています。