スマートカットとは、水素イオンの注入とウェハの貼り合わせを組み合わせて、ごく薄い単結晶の層を別のウェハの上に移し取る技術です。1990年代にフランスの研究機関CEA-Letiで開発され、Soitec社がSOIウェハの量産方法として実用化しました。現在のSOIウェハの大部分がこの方法で作られています。
手順は次のとおりです。まず、表面を酸化した元のウェハ(ドナー)に水素イオンを注入し、表面から一定の深さに水素のたまった層を作ります。次に、これを土台となる別のウェハ(ハンドル)に貼り合わせ、400〜600℃程度に加熱すると、水素の層に沿ってウェハが割れ、薄いシリコンの層だけが土台側に移ります。最後に、割れた表面を研磨や熱処理で平らにして完成です。
注入する深さで移し取る層の厚さを精密に決められるため、FD-SOIのように10nm前後の非常に薄いシリコン層が求められるウェハに向いています。元のウェハは表面を整えれば繰り返し使えるので、材料の無駄も少なくて済みます。この方法はシリコン以外にも広がっており、高価なSiCの薄い層を安価な土台に移すSiC基板や、高周波フィルタ用の圧電材料(タンタル酸リチウムなど)を貼り合わせた基板の製造にも使われています。