酸化膜とは、物質の表面が酸化してできた膜、または酸化物でできた膜のことです。半導体では主にシリコン酸化膜(SiO₂、二酸化ケイ素)を指し、現場では単に「酸化膜」「オキサイド」と呼びます。SiO₂はバンドギャップ約9eVの優れた絶縁体で、シリコンとの界面の欠陥が少なく、しかもシリコンを加熱するだけで良質な膜ができます。この性質は、シリコンが半導体の主役になった大きな理由の一つです。
酸化膜は作り方によって、熱酸化膜とCVD酸化膜に大きく分けられます。熱酸化膜は、酸化炉でシリコンを800〜1200℃の酸素(ドライ酸化)や水蒸気(ウェット酸化)の中で加熱して作ります。緻密で界面の特性に優れるため、ゲート酸化膜やパッド酸化膜に使われます。シリコン自身が酸化されて膜になるため、膜厚の約44%は元のシリコン表面より下側にできます。CVD酸化膜は、TEOSやシランを原料に400℃前後で堆積させる膜で、下地を選ばず厚く付けられるため、層間絶縁膜(NSG・BPSG)やSTIの埋め込み、ハードマスクに使われます。このほか、シリコンを空気中に置くだけで自然にできる厚さ1〜2nm程度の自然酸化膜もあります。
酸化膜の用途は、ゲート絶縁膜、素子分離(LOCOS・STI)、イオン注入のマスクや表面保護、配線間の層間絶縁膜、エッチングのハードマスクなど多岐にわたります。膜厚はエリプソメータや光干渉式の膜厚計で測定し、除去にはフッ酸(DHF・BHF)によるウェットエッチングや、フッ素系ガスのプラズマによるドライエッチングを使います。微細化でゲート酸化膜が1nm前後まで薄くなると、トンネル電流によるリークが増えたため、45nm世代以降は酸化ハフニウム(HfO₂)などの高誘電率(high-k)膜に置き換えられ、性能は酸化膜換算膜厚(EOT)で比較されるようになりました。