シリコン量子ビット(スピン量子ビット)とは、シリコンの中に閉じ込めた1個の電子(または正孔)が持つ「スピン」という性質の向きを、量子コンピュータの情報の単位(量子ビット)として使う方式です。スピンには上向きと下向きの2つの状態があり、量子力学ではその両方を重ね合わせた状態も取れます。電子1個を閉じ込める小さな箱(量子ドット)は、トランジスタとよく似たゲート電極の構造で作ります。
最大の特長は、今の半導体工場の技術で作れることです。超伝導方式の量子ビットは1個が数百μm角と大きいのに対し、シリコンのスピン量子ビットはトランジスタ並みの大きさで、将来100万個規模の量子ビットを1つのチップに集積するのに向いていると期待されています。Intelは300mmウェハのラインで12量子ビットのチップを試作し、日本では日立製作所や理化学研究所が研究を進めています。
電子のスピンは周りの原子核のスピンの影響で状態が乱れやすいため、核スピンを持たないシリコン28だけを集めた同位体濃縮シリコンを使うと、状態を長く保てるようになります。動作には1K(約マイナス272℃)前後以下の極低温が必要で、量子ビットを制御する回路を極低温で動かす技術や、量子ビットどうしの特性のばらつきを抑えることが課題です。