SiGe(シリコンゲルマニウム)とは、シリコンとゲルマニウムを混ぜ合わせた結晶の半導体材料です。ゲルマニウムの割合を変えることで、結晶の原子の間隔(格子定数)やバンドギャップを調整でき、シリコンの製造技術とそのまま組み合わせて使えるため、ロジックのトランジスタから高周波の回路まで幅広く使われています。ゲルマニウムの原子はシリコンより大きく、両者の格子定数は約4%違います。
最も代表的な用途は、ひずみによるトランジスタの高速化です。pMOSのソースとドレインの部分にSiGeを埋め込むようにエピタキシャル成長させると、原子の間隔の違いからチャネルのシリコンが押し縮められ、正孔が動きやすくなって電流が増えます。2003年ごろの90nm世代からIntelが量産に取り入れ、その後の世代の標準的な技術になりました。高周波の分野では、ベースにSiGeを使ったHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)が、通信用のICやレーダーで使われています。
GAA(ナノシート)トランジスタの製造でも欠かせません。シリコンとSiGeの薄い層を交互に積み重ね、後でSiGeの層だけを選んで取り除くことで、浮いたシリコンのナノシートが残り、その周りをゲートで囲みます。SiGeとシリコンを薬液やガスで選んで削り分けられることが、この構造を作る鍵になっています。pMOSのチャネルそのものにSiGeを使い、正孔の移動度を上げる技術も使われています。