量子井戸とは、バンドギャップの小さい半導体の薄い層を、バンドギャップの大きい半導体の層で上下から挟んだ構造です。挟まれた層の厚さは数nmから十数nm程度で、電子や正孔はこの薄い層の中に閉じ込められます。エネルギーの図で見ると、井戸のようにへこんだ部分に電子が入っている形になることから、この名前がついています。
層が電子の波の長さと同じくらいまで薄くなると、量子力学の効果によって、電子が持てるエネルギーがとびとびの値(量子化された準位)に限られるようになります。とびとびのエネルギーの値は井戸の厚さで決まるため、同じ材料でも井戸の厚さを変えれば、発光する光の波長を調整できます。また、電子と正孔が狭い場所に閉じ込められるため、出会って光る確率が高くなります。
この性質を生かして、量子井戸は半導体レーザーとLEDの発光層に欠かせない構造になっています。井戸を何層も重ねた多重量子井戸(MQW)がよく使われ、青色・白色LEDではInGaNとGaNの多重量子井戸が光を出しています。半導体レーザーでは、量子井戸によって少ない電流で発振でき、効率と温度の特性がよくなります。量子井戸のような薄い層を原子のレベルで精度よく作るため、MBEやMOCVDといった結晶の成長の技術が使われます。