最終更新 2026-10-19

化学シフトとは(XPS)

Chemical Shift

化学シフトとは、同じ元素でも結びつく相手や状態によって、測定で得られるエネルギーがわずかにずれる現象です。XPSでは、酸化されると結合エネルギーが高い側にずれ、シリコンの2p電子はSiで約99eV、SiO2で約103eVに現れます。表面から数nmの化学状態が分かり、自然酸化膜や界面、残渣の分析に使われます。

目次7項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連用語
  6. 比較・違いを学ぶ
  7. 出典・参考資料

定義・解説

化学シフトとは、同じ元素でも、どの元素とどのように結びついているか(化学状態)によって、測定で得られるエネルギーの値がわずかにずれる現象です。半導体の分析では、主にX線光電子分光法(XPS)で、元素の酸化の状態や結合の相手を調べるのに使われます。

XPSは、試料にX線を当てて表面から飛び出してくる電子(光電子)のエネルギーを測り、元の原子の中で電子がどれだけ強く束縛されていたか(結合エネルギー)を求める方法です。原子が酸素などの電子を引き付けやすい元素と結びつくと、内側の電子がより強く束縛され、結合エネルギーが高い側にずれます。たとえばシリコンの2p電子は、純粋なシリコンでは約99eV、二酸化ケイ素(SiO2)では約103eVに現れ、約4eVずれます。その間に現れる小さな山は、酸化が中途半端な状態(亜酸化物)を表します。

XPSは表面から数nmの深さの情報を得られるため、自然酸化膜の厚さや組成、ゲート絶縁膜とシリコンの界面の状態、high-k膜の中の結合、洗浄やエッチングの後の表面の汚れや残渣の分析に使われます。アルゴンイオンで表面を少しずつ削りながら測ると、深さ方向の分布も分かります。なお、核磁気共鳴(NMR)でも化学シフトという言葉が使われますが、こちらは原子核の共鳴の周波数のずれを指す別の概念です。

図解

XPSでのシリコン2p電子の結合エネルギーの化学シフト(Si・亜酸化物・SiO2)
値は代表的な目安。帯電の補正の方法で多少変わる。

よくある質問(FAQ)

酸化されると結合エネルギーが高くなるのはなぜですか?
酸素は電子を引き付けやすい元素なので、シリコンが酸素と結びつくと、シリコンのまわりの電子が酸素側に引っぱられ、シリコンの原子はややプラスの状態になります。その結果、内側に残った電子が原子核により強く引き付けられ、取り出すのに必要なエネルギー(結合エネルギー)が高くなります。
XPSで分かるのはどのくらいの深さまでですか?
飛び出した電子が途中でエネルギーを失わずに出てこられるのは表面のごく近くだけなので、得られるのは表面から数nm程度の情報です。それより深い部分を調べるときは、アルゴンイオンで表面を少しずつ削りながら測る方法や、X線を当てる角度を変える方法を使います。

設備の製造メーカー

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出典・参考資料

  1. 東レリサーチセンター「X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)」(2026/10/10 確認)