クライオ注入(低温イオン注入)とは、ウェハをマイナス100℃程度かそれ以下の低い温度に冷やした状態で、イオン注入を行う技術です。ふつうのイオン注入では、ウェハは室温か、ビームの熱でそれより少し高い温度になります。ウェハを冷やすことで、注入の間に結晶の中で起こる変化を抑え、注入でできる欠陥の状態を制御します。
イオンが打ち込まれると、シリコンの原子がはじき飛ばされて欠陥ができますが、室温では注入の最中にも一部の欠陥が熱で動いて元に戻ったり、集まったりします(動的アニール)。ウェハを冷やすとこの動きが抑えられるため、同じ量のイオンでも結晶がきれいにアモルファス(原子の並びがない状態)になりやすくなります。その後の熱処理で結晶を回復させると、アモルファスと結晶の境目の下に残る欠陥(EOR欠陥)が少なくなり、リーク電流の低減や、TED(過渡増速拡散)の抑制につながります。
FinFETのような立体の構造では、細いフィンに注入すると結晶の回復がうまく進まず欠陥が残りやすいため、欠陥を減らす方法としてクライオ注入が検討・採用されてきました。装置には、注入中のウェハを冷やし続ける冷却機構と、取り出したときにウェハの表面に水分が結露しないようにする仕組みが必要です。冷却と温め直しの時間の分、処理の速さ(スループット)が下がることも課題です。