高エネルギーイオン注入とは、イオンを数百keVから数MeV(メガ電子ボルト)という高いエネルギーまで加速してウェハに打ち込み、シリコンの表面から数μmの深いところに不純物の層を作る技術です。イオンが入る深さ(飛程)はエネルギーにほぼ比例して深くなるため、深い層を作るには高いエネルギーが必要になります。
代表的な用途は、CMOSのウェル(トランジスタを作る土台となる不純物の領域)です。深いところほど濃度が高くなるレトログレードウェルを高エネルギー注入で作ると、ラッチアップに強くなり、長い時間の熱拡散でウェルを作る工程を省けます。CMOSイメージセンサーでは、光を電気に変えるフォトダイオードを深くまで作り、隣の画素との間を深い分離層で区切るために使われます。光が深くまで届く長い波長の光の感度を上げ、画素どうしの混色を防ぐためです。パワー半導体の深い層の形成にも使われます。
高いエネルギーまでイオンを加速するには、高電圧を何段にも分けてかけるタンデム型や、高周波の電界で少しずつ加速する線形加速器(リニアック)型の装置が使われます。深い層を作るには、浅い場所に打ち込みたくない部分を守るマスクも厚くする必要があり、厚いレジストやハードマスクが使われます。注入の深さを正確にそろえるため、エネルギーの精度と、結晶の隙間を通って深く入ってしまうチャネリングの管理が重要です。