ILT(Inverse Lithography Technology:逆リソグラフィ技術)とは、ウェハの上に作りたいパターンの形から逆算して、そのパターンを最もよく再現できるフォトマスクの形を、計算で求める技術です。通常の考え方では、マスクの形を決めてから、ウェハにどう写るかを計算します。ILTはこれを逆向きに解き、「ウェハにこう写ってほしい」という目標から、マスクの形を数学的な最適化で導きます。
微細なパターンを光で写すと、光の回折や干渉のために、マスクの形がそのままウェハに写りません。これを補正するのがOPC(光近接効果補正)で、マスクのパターンの辺を少しずつ動かしたり、小さな補助のパターンを足したりします。OPCは決められた規則やモデルに沿って元の形を少しずつ直していく方法ですが、ILTはマスクの形を自由に変えられる前提で最適な解を探すため、曲線を含む複雑な形(カービリニア)のマスクになり、焦点や露光量がずれても安定して写る範囲(プロセスウィンドウ)を広げられます。
ILTの最適化には膨大な計算が必要で、長く一部の重要な層やホットスポットに限って使われてきました。GPUなどによる計算の高速化と、曲線のパターンでも短時間で描けるマルチビームのマスク描画装置の普及により、より広い範囲への適用が進んでいます。光源の形とマスクを同時に最適化するSMO(ソースマスク最適化)とも組み合わせて使われます。