サイドウォールスペーサ(側壁スペーサ)とは、トランジスタのゲートなどの段差の側面に、窒化シリコンや酸化シリコンの薄い膜を壁のように残した構造です。段差の上から膜を均一に付けた後、異方性のドライエッチングで真上から全面を削ると、平らな部分の膜は取り除かれ、段差の側面の膜だけが残ります。この方法で、露光の位置合わせをしなくても、段差に沿った細い構造を自動的に作れます。
トランジスタでは、スペーサがいくつもの役割を持ちます。代表的なのが、ソースとドレインを作るイオン注入の位置の調整です。まずスペーサを作る前に、ゲートの両側に浅く薄い不純物の層(LDD)を注入し、次にスペーサを作ってから、濃い不純物を注入します。スペーサの幅の分だけ濃い層がゲートから離れるため、ゲートの端の電界が和らぎ、ホットキャリアによる劣化を防げます。また、ソース・ドレインの上だけに金属のシリサイドを作るサリサイドの工程で、ゲートとソース・ドレインがつながらないよう隔てる役割も果たします。
スペーサの考え方は、パターンの微細化にも使われています。SADP(自己整合ダブルパターニング)では、露光で作った線(芯)の両側にスペーサを作り、芯を取り除くと、元の線の2倍の本数の細い線が残ります。露光の限界より細かい間隔の線を作れるため、FinFETのフィンやメモリの配線の形成に欠かせない技術になっています。スペーサの幅は膜の厚さで決まるため、ALDなどで膜の厚さを精密に制御します。