ファセット(Facet)とは、もともと宝石のカット面のように、物体の表面に現れた平らな面のことです。半導体では主に2つの意味で使われます。1つは結晶の特定の面(結晶面)がそのまま表面に現れた平坦な面で、結晶成長やウェットエッチングで生じます。もう1つは、ドライエッチングの際にマスクや膜の角(肩)が斜めに削られてできる傾斜面で、ファセッティングとも呼ばれます。
結晶面としてのファセットは、面によって原子の並び方と結合の強さが異なることから生まれます。シリコンをアルカリ性の薬液(KOHやTMAH)でエッチングすると、{111}面だけが極端に削れにくいため、{100}面のウェハには{111}面が約54.7°の斜面として現れ、V字溝やピラミッド形の穴ができます。MEMSはこの性質を積極的に利用しています。また、ソース・ドレインにSiGeなどを選択エピタキシャル成長させると、成長の遅い面がファセットとして現れ、形状によっては膜の高さや応力の効き方が変わります。半導体レーザーでは、結晶を劈開してできる鏡のような端面をファセットと呼び、光を反射させる共振器として使います。
エッチングでのファセットは、イオンによるスパッタの削れやすさが入射角で変わることで生じます。膜はイオンが真上から当たるより、斜め45〜60°前後から当たるほうが削れやすく、マスクの角が面取りされるように傾斜面ができ、それが進むとマスクが後退して寸法が変わったり、下の膜まで削れたりします。自己整合コンタクトのようにマスクや保護膜の厚みに余裕がない工程では特に問題になるため、選択比の高いハードマスクを使う、エッチングガスで角に保護膜を付けるなどしてファセットを抑えます。