クーロン効果とは、電子ビームの中の電子どうしが、同じマイナスの電荷を持つために反発し合い(クーロン力)、ビームが広がってぼやけたり、像の位置がずれたりする現象です。空間電荷効果とも呼ばれ、電子ビーム描画装置や電子ビーム検査装置の性能を制限する要因の1つです。
ビームの電流を大きくするほど、つまり単位時間に流す電子の数を増やすほど、電子どうしの距離が近くなって反発が強まり、ぼけが大きくなります。電子ビーム描画では、描画を速くするにはビームの電流を増やしたいのに、増やすとクーロン効果でパターンがぼやけるという矛盾があり、これが処理能力(スループット)を上げられない根本的な理由になっています。
この制約を回避するために生まれたのが、マルチビーム描画装置です。1本の太いビームの代わりに、数十万本の細いビームに分けて同時に描くことで、全体の電流は大きくても、1本あたりの電流は小さく、ビームの経路上での電子の密度も低く保てます。その結果、ぼけを抑えながら描画の速度を大きく上げられ、EUVマスクのように描画量の多いマスクの製造で使われるようになりました。