PCW(プロセス冷却水)とは

PCW (Process Cooling Water)

最終更新:2026-09-14工場インフラチラー・温調機

PCW(プロセス冷却水)とは?

PCW(プロセス冷却水)とは、製造装置の発熱部を冷やすために工場全体へ循環供給される冷却水で、供給側をPCWS、戻り側をPCWRと呼びます。RF電源・真空ポンプ・装置側チラーなどの熱を受け取り、熱交換器で冷凍機や冷却塔へ熱を渡して再び送り出す閉ループです。スケールや腐食、漏れ電流を防ぐため、純水をベースに導電率・pH・菌数を管理した水が使われます。

定義・解説

PCW(Process Cooling Water、プロセス冷却水)とは、半導体工場で製造装置の発熱部を冷やすために、工場全体へ循環供給される冷却水です。工場の設備側から装置へ送る供給側をPCWS(Supply)、装置で熱を受け取って戻ってくる戻り側をPCWR(Return)と呼び、両者をつないだ閉ループで運用されます。超純水(UPW)や薬液、特殊ガスと並ぶ、ファブの基幹ユーティリティの1つです。

PCWの主な供給先は、大きな熱を出す装置部品です。プラズマ装置のRF電源やマッチングボックス、真空ポンプ、イオン注入装置の電源や電磁石、熱処理炉のチャンバ外壁、露光装置などが代表的です。装置側の精密温調機(チラー)も多くは水冷式で、静電チャックなどから汲み出した熱をPCWへ捨てています。±0.1℃級の精密な温度制御はチラーが担い、その熱を工場の外へ運び出すのがPCWという分担です。

PCWの系統は、ポンプ・熱交換器・フィルタ・膨張タンクなどで構成されます。装置から戻った温かいPCWRは、熱交換器で冷凍機の冷水や冷却塔の冷却水に熱を渡して冷やされ、再びPCWSとして送り出されます。各装置が必要な流量を得られるかは供給側と戻り側の圧力差(差圧)で決まるため、装置の増設や稼働状況が変わっても差圧を一定に保つ制御が重要になります。

PCWには水道水ではなく、純水をベースに水質を管理した水が使われます。硬度成分はスケールとして細い冷却流路に付着して冷却能力を落とし、溶存酸素や塩化物イオンは配管や装置内の金属を腐食させます。細菌が繁殖すればスライムとなって流路を詰まらせます。RF電源のように通電部の近くを水が流れる機器では、導電率が高いと漏れ電流の原因にもなるため、導電率・pH・菌数などを監視し、必要に応じて防食剤の添加やフィルタでの除去を行います。

ファブの消費電力のうち、空調と冷凍機による熱の処理が占める割合は大きく、PCWの供給温度をどこに設定するかは省エネルギーに直結します。供給温度を高めにできれば冷凍機の負荷が減り、外気で冷やせる期間も長くなる一方、装置側には冷却能力の余裕が必要になります。また、PCWが装置内で漏れると装置の故障やクリーンルームの汚染につながるため、漏水検知や装置接続部の保守も運用上の重要な管理項目です。

PCW・チラー・超純水の役割分担

ファブには「水」と呼ばれる系統が複数あり、名前が似ていても役割はまったく異なります。 PCWと混同されやすい装置側チラーと超純水(UPW)を並べると次のとおりです。

項目PCW装置側チラー超純水(UPW)
役割装置と水冷チラーの熱を工場の冷凍機・冷却塔へ運ぶ装置の特定部位を精密に温調するウェハの洗浄・リンス
規模工場全体の1系統(またはエリア別の数系統)装置ごとに1台以上工場全体の1系統
流し方閉ループで循環装置との間で熱媒を循環使い切り(回収・再生あり)
温度の精度工場全体でおおむね一定に保つ±0.1℃級工程による
ウェハとの接触しないしないする
水質の考え方スケール・腐食・菌を防ぐ熱媒(フッ素系液体・純水など)を管理イオン・粒子・有機物を極限まで除く

チラーが温調する代表的な部品は静電チャックです。 ファブのユーティリティ全体はファブインフラ設備の解説を参照してください。

必要な流量は発熱量と温度差で決まる

装置が冷却水に渡す熱量 Q は、流量 V̇ と、供給と戻りの温度差 ΔT で決まります(ρ:水の密度、c:比熱)。

Q = ρ · c · V̇ · ΔT ⇔ V̇ = Q / (ρ · c · ΔT)

たとえば発熱 10 kW の装置を ΔT = 5 K で冷やす場合、ρ·c ≈ 4,180 kJ/(m³·K) として V̇ = 10 / (4,180 × 5) ≈ 4.8×10⁻⁴ m³/s、つまり毎分約 29 L が必要です。 同じ熱量を ΔT = 2.5 K で運ぼうとすれば、流量は2倍の毎分約 57 L になります。

この流量は、PCWSとPCWRの差圧によって装置内へ押し込まれます。配管内の流れが乱流のとき、 圧力損失はおおむね流量の2乗に比例するため、流量を2倍にするには約4倍の差圧が必要です。 装置を増設すると系統全体の差圧が下がり、末端の装置から流量不足になるのはこのためで、 ポンプの回転数制御などで供給側と戻り側の差圧を一定に保つ運用が取られます。

水質で管理する項目

項目管理しないと起きること
導電率高いと通電部の近くで漏れ電流が流れ、腐食も進みやすくなる
pH外れると配管や装置内の金属が腐食する
硬度成分・シリカスケールとして細い冷却流路に付着し、冷却能力を落とす
溶存酸素・塩化物イオン金属の腐食を進める
菌数スライムが流路・バルブ・フィルタを詰まらせる
粒子装置側の細い流路や流量計を詰まらせる

管理の目標値は、装置メーカーの要求仕様と配管材質によって工場ごとに決められます。プラズマエッチング装置のRF電源のように、 水が通電部の近くを流れる機器ほど導電率の要求が厳しくなります。

よくある質問(FAQ)

PCWとチラーの違いは何ですか?
チラーは装置ごとに設置され、静電チャックや露光光学系などを±0.1℃級で精密に温調するユニットです。PCWは工場全体に循環する冷却水で、装置や水冷式チラーが出した熱を受け取り、工場の冷凍機や冷却塔まで運びます。精密な温度制御はチラー、熱の運び出しはPCWという役割分担です。
PCWSとPCWRとは何ですか?
PCWS(Process Cooling Water Supply)は設備側から装置へ送る供給側の冷却水、PCWR(Process Cooling Water Return)は装置で熱を受け取って設備側へ戻る側の冷却水です。装置の配管は両方に接続され、PCWSとPCWRの圧力差によって装置内に冷却水が流れます。戻り側は受け取った熱の分だけ温度が高くなります。
PCWに水道水を使わないのはなぜですか?
水道水に含まれる硬度成分がスケールとして冷却流路に付着し、冷却能力を落とすためです。塩化物イオンや溶存酸素による金属の腐食、細菌の繁殖による流路の詰まりも起こります。RF電源のように通電部の近くを冷却水が流れる機器では、導電率が高いと漏れ電流の原因にもなるため、純水をベースに水質を管理した水を使います。
PCWと超純水(UPW)の違いは何ですか?
超純水は洗浄やリンスでウェハに直接触れる水で、抵抗率18MΩ·cm以上といった極めて高い純度が求められ、使用後は回収・再生または排水されます。PCWはウェハに触れない装置冷却用の水で、閉ループで循環させて繰り返し使います。純水をベースにしますが、求められるのは超純水ほどの純度ではなく、スケール・腐食・菌を防ぐための水質です。

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Advanced Energy Industries米国

半導体製造装置向けRF電源・直流電源・マッチングネットワークの世界的リーダー。エッチング・CVD・PVDなどプ…

栗田工業日本

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