PCW(Process Cooling Water、プロセス冷却水)とは、半導体工場で製造装置の発熱部を冷やすために、工場全体へ循環供給される冷却水です。工場の設備側から装置へ送る供給側をPCWS(Supply)、装置で熱を受け取って戻ってくる戻り側をPCWR(Return)と呼び、両者をつないだ閉ループで運用されます。超純水(UPW)や薬液、特殊ガスと並ぶ、ファブの基幹ユーティリティの1つです。
PCWの主な供給先は、大きな熱を出す装置部品です。プラズマ装置のRF電源やマッチングボックス、真空ポンプ、イオン注入装置の電源や電磁石、熱処理炉のチャンバ外壁、露光装置などが代表的です。装置側の精密温調機(チラー)も多くは水冷式で、静電チャックなどから汲み出した熱をPCWへ捨てています。±0.1℃級の精密な温度制御はチラーが担い、その熱を工場の外へ運び出すのがPCWという分担です。
PCWの系統は、ポンプ・熱交換器・フィルタ・膨張タンクなどで構成されます。装置から戻った温かいPCWRは、熱交換器で冷凍機の冷水や冷却塔の冷却水に熱を渡して冷やされ、再びPCWSとして送り出されます。各装置が必要な流量を得られるかは供給側と戻り側の圧力差(差圧)で決まるため、装置の増設や稼働状況が変わっても差圧を一定に保つ制御が重要になります。
PCWには水道水ではなく、純水をベースに水質を管理した水が使われます。硬度成分はスケールとして細い冷却流路に付着して冷却能力を落とし、溶存酸素や塩化物イオンは配管や装置内の金属を腐食させます。細菌が繁殖すればスライムとなって流路を詰まらせます。RF電源のように通電部の近くを水が流れる機器では、導電率が高いと漏れ電流の原因にもなるため、導電率・pH・菌数などを監視し、必要に応じて防食剤の添加やフィルタでの除去を行います。
ファブの消費電力のうち、空調と冷凍機による熱の処理が占める割合は大きく、PCWの供給温度をどこに設定するかは省エネルギーに直結します。供給温度を高めにできれば冷凍機の負荷が減り、外気で冷やせる期間も長くなる一方、装置側には冷却能力の余裕が必要になります。また、PCWが装置内で漏れると装置の故障やクリーンルームの汚染につながるため、漏水検知や装置接続部の保守も運用上の重要な管理項目です。