二次元電子ガス(2DEG:Two-Dimensional Electron Gas)とは、性質の異なる2つの半導体の境目(ヘテロ界面)などに、電子がごく薄い層に閉じ込められて集まり、面の方向にだけ自由に動ける状態のことです。厚さの方向には動けず、平面の上だけを動き回るため「二次元」の電子の集まりと呼ばれます。HEMT(高電子移動度トランジスタ)は、この二次元電子ガスを電流の通り道として使います。
代表的な例は2つあります。1つはAlGaAsとGaAsの界面で、不純物を加えたAlGaAsの層から電子が隣のGaAsに移り、界面に集まります。電子は、不純物がいるAlGaAsから離れたGaAsの側を走るため、不純物にぶつかりにくく、非常に高い移動度を持ちます。この仕組みを使ったHEMTは1980年に富士通の三村高志らが発明しました。もう1つはAlGaNとGaNの界面で、材料が持つ分極という性質によって、不純物を加えなくても界面に高い密度(1cm²あたり10の13乗個程度)の電子が自然に集まります。
二次元電子ガスは、電子の密度が高く、しかも動きやすいため、高い周波数で動くトランジスタや、低い抵抗で大きな電流を流すパワートランジスタに向いています。GaNのHEMTは、スマートフォンの基地局や急速充電器に使われています。一方、GaNでは何もしなくても電子ガスができるため、そのままではゲートに電圧をかけなくても電流が流れる「ノーマリーオン」になり、パワー用途ではノーマリーオフにする工夫が必要です。物理の研究では、量子ホール効果の発見の舞台にもなりました。