ラマン分光法とは、物質にレーザー光を当てたとき、散乱される光のごく一部が、物質の原子の振動(格子振動、フォノン)の分だけ色(波長)を変えて出てくるラマン散乱を測り、物質の結晶の状態や応力、組成を調べる分析方法です。散乱光の波長のずれ(ラマンシフト)は、原子どうしの結合の強さや結晶の構造で決まるため、物質の「指紋」のように使えます。
半導体で特によく使われるのが、応力(ひずみ)の測定です。シリコンの結晶はラマンシフトで約520cm⁻¹の位置に鋭いピークを持ち、結晶が引っ張られると低い側へ、押し縮められると高い側へずれます。ずれの大きさから、ひずみシリコンのチャネルや、トレンチ・TSVの周りに生じた応力の大きさを見積もれます。レーザーを1μm程度に絞れるため、場所ごとの応力の分布を地図のように描くこともできます。
このほか、SiGeのゲルマニウムの割合、SiCの結晶の種類(ポリタイプ)や結晶の乱れ、グラフェンの層の数や欠陥、アモルファスと結晶の区別などにも使われます。試料を壊さず、大気中で前処理なしに測れるのが利点です。一方、ラマン散乱の光は非常に弱いため、強い蛍光を出す試料では測りにくく、レーザーの熱で試料の状態が変わらないよう出力の管理も必要です。