ロウハンマー(Row Hammer)とは、DRAMの同じ行(ロウ)を短い時間に何十万回も繰り返し開閉すると、隣の行のセルの電荷が失われてビットが反転してしまう現象です。2014年にカーネギーメロン大学とIntelの研究者が市販のDDR3モジュールで確認したことを報告し、広く知られるようになりました。行を金づちで叩き続けるように攻撃することから、この名前がついています。
原因は、微細化でワード線どうしの間隔が狭くなり、行を開閉するたびに生じる電気的な影響(電荷の注入や結合)が隣の行のセルに及ぶことです。1回の影響はわずかでも、リフレッシュの間隔(64ms)の間に何度も繰り返されると、隣のセルの電荷が判定できないほど減ります。世代が進むほど、反転が起こるまでの回数(しきい値)は小さくなる傾向があると報告されています。
単なる信頼性の問題にとどまらず、ソフトウェアから意図的に起こして権限を奪う攻撃に使えることが実証され、セキュリティ上の脆弱性としても扱われます。対策は、よく叩かれる行の隣を先回りしてリフレッシュする方法が中心で、DDR4ではTRR(Target Row Refresh)、DDR5ではアクセス回数を数えて対処するRFM(Refresh Management)などがJEDECで定められています。ECCも被害を減らしますが、複数ビットが同時に反転すると防ぎきれません。