SDC(Silent Data Corruption:サイレントデータ破損)とは、CPUやGPUなどのチップが、エラーを知らせることなく、間違った計算の結果を出してしまう現象です。プログラムが止まったり警告が出たりしないまま、誤ったデータが保存されたり、次の計算に使われたりするため、「サイレント(静かな)」と呼ばれます。2021年ごろにGoogleやMetaが、自社のデータセンターの大量のサーバーで実際に起きていることを報告し、業界で大きく注目されるようになりました。
原因の多くは、製造時のテストで見つからなかったわずかな欠陥や、使ううちに進んだ劣化で、特定の命令、特定のデータの値、特定の電圧や温度の組み合わせのときだけ誤った結果が出るといった、非常に見つけにくい形で現れます。チップの中の論理回路そのものの不良のため、メモリのECCのような既存の誤り訂正の仕組みでは検出できません。1チップあたりの発生はまれでも、何十万台、何百万台のサーバーを動かすデータセンターでは無視できない頻度になります。
対策として、半導体メーカーは製造時のテストを強化し、実際のプログラムに近い動作で調べるシステムレベルテスト(SLT)や、テストのパターンの見直しで検出率を上げています。データセンターの運用者は、稼働中のサーバーで定期的に診断のプログラムを走らせて怪しいコアを見つけて外す仕組みを導入しています。AIの学習のように、多くのチップで長時間計算を続ける用途が広がったことで、SDCへの対策の重要性はさらに増しています。