負性容量FET(NCFET:Negative Capacitance FET)とは、トランジスタのゲート絶縁膜に強誘電体の層を加え、その「負の容量」の性質を使って、ゲートにかけた電圧より大きな電圧をチャネルに伝えようとする次世代のトランジスタです。2008年にカリフォルニア大学バークレー校のサラフディンとパデュー大学のダッタが提案しました。
強誘電体は、ある条件で電圧を上げると蓄えた電荷が逆に減るように見える、負の容量の振る舞いを示すことがあります。この層を通常のゲート絶縁膜と直列につなぐと、チャネルの表面の電位がゲート電圧より大きく動き、内部で電圧が増幅されたような効果が得られます。その結果、MOSFETの室温での下限である60mV/decより急峻に電流を切り替えられ、電源電圧を下げて消費電力を減らせると期待されています。
強誘電体として有力なのは、既存の製造工程と相性のよいハフニウム系の酸化膜(HZOなど)です。ハフニウム酸化膜が強誘電性を示すことは2011年に報告され、ここから研究が一気に進みました。一方で、本当に負の容量が働いているのか、それとも別の効果なのかについては今も議論があり、動作の速さやヒステリシス(行きと帰りで特性がずれること)、ばらつきの制御が実用化への課題です。