オーバーハング(Overhang)とは、溝や穴に膜を付けるときに、開口部の上端(肩の部分)に膜が厚く付いて、庇(ひさし)のように内側へ張り出した状態のことです。英語で「張り出し」を意味し、登山で頭上に張り出した岩壁を指すのと同じ言葉です。半導体では主にスパッタリングなどのPVD(物理気相成長)で問題になり、レジストのパターン断面が上ほど広がる形を指して使うこともあります。
オーバーハングができるのは、スパッタされた原子がさまざまな角度から飛んでくるためです。開口部の肩は上方からも斜めからも原子を受け取れるのに対し、溝の底や側壁の下部には、開口部から見える狭い範囲の方向からしか原子が届きません。その結果、肩に膜が多く付き、張り出した膜がさらに影を作って内部への供給を減らします(シャドウイング効果)。オーバーハングが進むと、溝の底や側壁の膜が薄くなってステップカバレッジが悪化し、最後には開口部が塞がって、中にボイドが閉じ込められます。
銅配線では、溝に先にバリアメタルとシード層をPVDで付け、その上に電解めっきで銅を埋め込みます。このときシード層にオーバーハングがあると開口部が狭まり、めっきで埋め切れずにボイドが残ります。対策として、スパッタした原子をイオン化して基板のバイアスで垂直に引き込むイオン化PVD、肩に付いた膜をイオンで削り落として底に回し込む再スパッタ、ターゲットと基板の距離を離して斜めの成分を減らすロングスロースパッタなどが使われます。微細な穴では、形状に沿って均一に付くALDでライナーを形成する方法も広がっています。