カーケンドールボイド(Kirkendall Void)とは、2種類の金属が接する界面で、互いの原子が拡散する速さが異なるために、速く抜け出す側に原子の空き(空孔)が溜まり、それが集まってできる微小な空洞のことです。1947年に米国のカーケンドールが、銅と黄銅の接合で拡散によって界面の位置が動くこと(カーケンドール効果)を示したことにちなみます。高温で長時間保つほど拡散が進み、空洞が増えて大きくなります。
半導体のパッケージでは、ワイヤボンディングとはんだ接合で問題になります。金のワイヤとアルミニウムのパッドの接合では、高温で金とアルミニウムが互いに拡散して金属間化合物ができ、その過程で接合の界面付近にカーケンドールボイドが生じます。ボイドがつながると接合の強度が下がり、電気抵抗が上がって、最後には接合が剥がれる(ボンドリフト)不良になります。金とアルミニウムの化合物の一部が紫色に見えることから、この劣化はパープルプレーグとも呼ばれました。銅のワイヤとアルミニウムのパッドでは、化合物の成長が金より遅いため、高温での信頼性の面で有利とされています。
はんだ接合では、銅の電極とスズを含むはんだの界面にCu₆Sn₅やCu₃Snといった金属間化合物ができ、高温に長く置くとCu₃Snの層の中や界面にカーケンドールボイドが生じます。ボイドが並ぶと、落下などの衝撃に対して接合が割れやすくなります。対策として、電極にニッケルのめっきを施して銅とスズの拡散を抑えたり、はんだの組成や電極の表面処理を工夫したりします。カーケンドールボイドの発生は、高温放置試験の後にワイヤのプル試験やシェア試験、断面の観察で評価します。