TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide:水酸化テトラメチルアンモニウム)とは、化学式(CH₃)₄NOHで表される強アルカリ性の有機化合物で、半導体製造ではフォトレジストの現像液として最も広く使われています。露光によってアルカリに溶けるようになったレジストの部分を溶かし、パターンを浮かび上がらせます。水酸化ナトリウムや水酸化カリウムと違ってナトリウム・カリウムなどの金属を含まないため、トランジスタの特性を狂わせる金属イオンの汚染を起こさない点が、半導体で標準となった理由です。
レジストの現像液としては、濃度2.38wt%(0.26規定)のTMAH水溶液が世界的な標準になっており、多くのレジストはこの濃度で最適な性能が出るように設計されています。コーター/デベロッパの中でウェハの上に現像液を液盛り(パドル)したり、回転させながら吹き付けたりして現像し、超純水でリンスします。現像の時間や温度、濃度のわずかな違いが線幅に影響するため、濃度を厳密に管理した高純度品が使われます。現像が不十分だとパターンの底にレジストの残渣(スカム)が残ります。
TMAHはシリコンの異方性ウェットエッチングにも使われます。濃度の高いTMAH水溶液は、シリコンの{111}面をほとんど削らず{100}面を速く削るため、V字溝や斜面を持つ穴を作れ、MEMSの加工に利用されます。水酸化カリウムと違って金属を含まないことから、CMOSの工程と組み合わせやすいのが利点です。一方でTMAHは、皮膚から吸収されると神経や呼吸に作用して重い中毒を起こす強い毒性を持ち、国内外で死亡事故も報告されています。取り扱いでは保護具の着用と、付着時の迅速な洗浄が徹底されます。使用後の廃液は回収して再生・処理されます。